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多視点実時間画像処理のためのPCクラスタ

視覚情報を基に,複雑な物体や環境を正しく認識・理解するためには,複数の センサーを用いた協調的な観測が不可欠であり,そのためには実時間の動画像 を処理できる高性能な分散システムが必要である.一般に,画像理解の問題を 扱う場合,非圧縮の劣化のない画像を用いる必要があり,複数のカメラを利用 すると,入力データのバンド幅は極めて大きなものになってくる.そのような バンド幅の非常に大きなデータを単一システムで処理することは極めて難しい (技術的に可能であったとしても経済的には非常に高いコストを要する)問題 である.そこで,我々は多視点実時間動画像処理を効率的に行うためのP Cクラスタ(PCを高速なネットワークで結合した分散システム)の開発を進 めており,本年度はその設計と,基本ソフトウェアの開発を行った.

今回開発したPCクラスタは,10台のノードPC(PentiumIIを搭載しているAT互 換機)からなっており,各PCはスイッチングネットワークMyrinet(1.28Gbps 全二重)で相互に結合されている.また,このうち6台では,CCDカラーカメラ がビデオキャプチャボードによりノードPCに接続されている.6台のカメラは 1つの外部同期信号で外部同期が可能になっており,時間同期のとれた多視点 画像が撮影できるようになっている.また,異なったPCで撮影された動画像の 各フレームの撮影時刻を同定できるよう,全てのPCはNTPを用いて時刻合わせ を行っている.

本システムでは,実時間で画像データを受信,処理,送信するために,PC間の 同期をとることが必要である.このためカメラからの垂直同期信号のタイミン グに合わせて,タイムスタンプを付加したフレーム同期信号(Frame Synchronization Signal(FSS))と呼ぶ信号を生成し,これを用いて各種の同期 処理を行う.また,同期処理を効率的に行うため,各PCでは以下の4つのモジュー ルが並行プロセスとして動いている(図2.5).

Figure 2.5: ノードPCにおけるモジュールの構成
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\epsfile{file=RIN/module3.eps,width=0.8\textwidth} \end{center}\end{figure}

データ処理モジュール
Data Processing Module (DPM).実際の画像処 理を行うモジュール.データ受信モジュールからデータを受け取り,そのデー タを入力として画像処理を行い,処理結果をデータ送信モジュールに送る.

データ受信モジュール
Data Receiving Module (DRM).データ受信モジュー ルは,別のPCからのデータをメッセージとして受信する.処理モジュール からデータを要求されると,次に処理すべきデータへのポインタを返す.ま た,データをキューイングするためのバッファを持っている.

データ送信モジュール
Data Sending Module (DSM).データ送信モジュー ルは,処理モジュールからデータを受信すると,次のPCへのデータをPMメッ セージとして送信する.データをキューイングするためのバッファを持って いる.

フレーム同期モジュール
Frame Synchronizing Module (FSM).FSMは データ処理モジュール間の同期をとる.また,同期処理のため,FSSをデー タの流れにそって上流から下流へ向けて送信する.

現在,これらのモジュールをベースにして実現している同期機構は以下の3種 類である.

前向き同期
前向き同期は,DPMに処理の開始を知らせる同期である.また,受信したFSSを 基に処理遅れ,データの未受信といったエラー検出を行うことができる.

バリア同期
複数のPCからデータを受信する場合,同時刻に処理されるべき全てのデータを 待たなければならない.このための同期がバリア同期である.

後向き同期
後向き同期は,無駄な処理を回避するために,他のPCに対してデータ落ちを通 知するものである.データ落ちが起こるようなエラー処理を行うとき,複数の PCからデータを受信するPCにおいて,最悪の場合ほとんど処理が実行されない ことがある.これを避けるために,この後向き同期を用いる.後向き同期は, あるPCでデータ落ちが生じた場合,そのデータに対する処理のキャンセル信号 を近傍のPCに送信し,そのデータに対する処理や通信を行わないようにする.



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