Next: 研究課題とアプローチの方法
Up: 研究の背景と特徴
Previous: 実世界で機能するシステムとしての意義
「分散協調」の名前が表すように、本研究はいわゆるマルチエージェントシス
テムに関する研究の1つであると言える。しかし、本研究が目指す分散協調視
覚は、分散計算機システム上での基本ソフトウェア・ミドルウェア・応用ソフ
トウェア実現のためのソフトウェア・エージェントや、新たな計算モデルとし
てのエージェント指向プログラミングに関する研究とは異なり、次のよう
な特徴を持つ。
- 物理的身体性を持ったエージェント
- :
分散協調視覚システムにおけるエージェントは、観測ステーションや移動ロボッ
トといった物理的身体を持った実在物であり、視覚を通じたsensingおよびカ
メラ制御や身体運動といったactionによって、実世界との直接的相互作用機能
を持つ。我々は、こうした機能により、実世界で有効に機能する知能システム
の実現およびネットワーク上に作られた情報メディア社会と実世界との有機的
な結合が可能となると考えている。
- メッセージ通信なしのコミュニケーション・協調
- :
ソフトウェアとしてのマルチエージェントシステムでは、エージェント間のコ
ミュニケーションや協調はメッセージ通信を基本としている。一方、分散協調
視覚システムが対象とする実世界では、観測ステーションや移動ロボットの意
志とは無関係にそれらの物理的身体に対して直接的に反応する音や光というメ
ディアが存在し、そうしたメディアを用いたsensingによって、他の観測ステー
ションや移動ロボットの存在や行動を認識することができる。言い換えると、
sensing機能の利用によって、メッセージ通信を用いないコミュニケーション
や協調が実現できる。本研究では、いわゆる「アイ・コンタクト」のように、
視覚というsensing機能に基づいたエージェント間のコミュニケーションや協
調を実現するための基本機構の実現を目指している。