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現在の基本ソフトウェアはまだ十分な最適化が行われておらず,十分な性能が
出ているとは言えない.現状の基本性能は以下のようなものである.
- 640 x 480画素のカラー画像(1画素32ビット)の転送時間:12.1msec
- 画像処理に割り当て可能な時間:10fps時で1フレームあたり58.9msec
これからもわかるように,同期機構のオーバーヘッドが大きいため,フルサイ
ズのカラー画像では実時間(NTSCのフレーム速度である30fps)の処理は,今
の実装では不可能である.これは,我々が実装した同期機構の効率の問題だけ
でなく,OSレベルの問題もあると考えられ,リアルタイムOSを利用するなどの
対応を考える必要がある.もちろん,以下に述べるように画像の空間的な解像
度を低減させることによって,時間的な解像度を保つことは可能である.
次に,現在の実装をベースに,簡単な実時間アプリケーション(実時間モーショ
ンキャプチャ)を開発し,システムの有効性を評価した.PCクラスタは図
2.6に示すような構成を用いた.
Figure 2.6:
モーションキャプチャにおける処理モジュールの構成
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Figure 2.7:
実時間モーションキャプチャシステムの構成
(a) セットアップ
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(b) 実験の様子
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- Image Capturing Module(ICM)
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このモジュールは画像の獲得とリサイズ(320 x 240画素)を行う.ここで得
られた画像は,2DPMに転送される.
- 2-D Processing Module(2DPM)
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このモジュールは2次元画像処理を行うモジュールであり,2次元的画像特徴
を抽出して3DPMに転送する.
- 3-D Processing Module(3DPM)
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このモジュールは3次元情報抽出のモジュールである.2DPMから転送
された特徴情報から3次元モデルパラメータを抽出し,それをRPMに転
送する.
- Real-time Rendering Module(RRM)
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このモジュールは実時間の描画モジュールである.3DPMから転送され
た3次元モデルパラメータをもとに,対象物を可視化する.
作成したシステムは,12個のカラーマーカを人間の各関節に装着したものを2
視点で観測して全身の動きを実時間で再構成するものである.処理の内容は,
カメラで撮影した画像からカラーマーカを抽出し,2視点からの情報を基にカ
ラーマーカの3次元位置を求め,人体の動きを推定するというものである.画
像の解像度を320 x 240画素に縮小することによって,30fpsのオンライ
ンの実時間処理が可能であり,仮想空間における実時間インタラクション等に
利用できることを確認した(図2.7).また,6視点でカラー
マーカを追跡するシステムについても基礎実験を行い,障害物による隠蔽を多
視点情報により回避できるアルゴリズムが30fpsで動作することを確認した.
wsbmaster@vision.kuee.kyoto-u.ac.jp