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多体軌跡推定と分散協調型モデル構築

担当:吉田 紀彦(長崎大学)

本研究では,視覚・判断の機能を備えた複数のエージェントがネットワ ークで結ばれ,分散協調的に動作することで全体として統合的な処理を 行うシステムの実現に向けて,その基盤を構築することを目指している.

具体的には,分散人工知能および分散センサ網の重要な問題である,複 数の対象移動物体の軌跡を推定する多体軌跡推定(Multi-Target Motion Analysis)を取り上げ,複数のセンサからの情報を複数エージェ ントで分散協調的に統合して推定を行う,すなわち実世界モデルを構築 する方式を考案して,その有効性を検証している.

Figure 2.27: Multi-Target Motion Analysis.
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\epsfile{file=YOSHIDA/ny-mtma.eps,width=0.5\textwidth}\end{center}\end{figure}

問題の概要を図 2.27 に示す.多体軌跡推定では,デー タと対象の対応付け,軌跡の推定の両者を同時に進めなければならない. この処理を分散協調化することで大幅な効率改善と推定精度の向上を達 成した.昨年度まではこの方式を改良して,直線軌跡のみしか推定でき なかったものを,その重ね合わせによって曲線軌跡の推定をも可能にし た.

本年度は,エージェント間の分散協調の方式について再検討を加え,1 つには,新たに各時点・各位置ごとにターゲットの位置を分散協調的に 推定する手法を考案し,その結果として任意形状の軌跡を推定すること を可能とした.シミュレーション実験結果の1例を,図 2.28 に示す.この手法はデータ誤差に弱いという欠点 はあるものの,処理速度が速く実時間にも十分に追従できるため,今後 はさらに検討と改良を加えていく.

Figure 2.28: Experiment Result.
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\epsfile{file=YOSHIDA/ny-track.eps,width=0.5\textwidth}\end{center}\end{figure}

もう1つには,データを分散協調的に統合して推定を実行する,すなわ ち対象モデルを構築する際,そのエージェント集団について,適切な組 織構造,言い替えれば複数エージェントの通信・結合関係をどのように 動的に決定していけばよいかについて,分析検討を進めた.具体的には, エージェントが推定途中の部分モデル情報を共有して統合化を進めてい く際に,端的に言えば,その部分モデルを自ら計算するほうが速いか, 他から受け取るほうが速いかを自らが判断する幾つかの戦略,さらには 複数の戦略の選択を行うメタ戦略を用意し,それに従って各エージェン トがエージェント間の通信トポロジーを動的に調整していく.戦略選択 に伴う構造の相転移現象などを,シミュレーションで明らかにした.



wsbmaster@vision.kuee.kyoto-u.ac.jp