人間の情報処理の理解とその応用に関する研究

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研究の背景

人間の持つ重要な情報処理機能の1つとして知覚がある。わが国における言語、音声、画像を対象としたパターン情報処理研究は、1970年代から急速に発展し、着実な進歩を遂げてきた。この間、大学等における研究成果を基に企業での実用化が図られ、かな漢字変換、機械翻訳、音声認識、音声合成、郵便番号読み取り装置、指紋認識、CTなど現在の情報化社会を支える基盤技術として豊かな実りをもたらしている。

しかし、こうしたパターン情報処理技術には以下のような限界や問題がある。

一方、神経生理学や心理学の観点から人間の情報処理機構を解明しようとする研究は、古くから行われてきたが、多くは非日常的な限定された状況でのモデル構築に留まっていた。しかし最近では、分子生物学などの基礎科学の急速な進歩および、陽電子放射断層法(PET: position emission tomography)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI: functional magnetic resonance imaging)、脳磁場計測法(MEG: magnetoencephalography)、(近赤外)光トポグラフィ(NearInfra-Red Topography)、などの非侵食計測・画像化技術が進歩し、多様な日常生活環境における脳の活動状態の詳細な観察が可能となってきた。

以上述べたような状況のもと、人間における複数知覚系の統合・協調メカニズムおよび、身体を介した知覚系と行動系との相互依存関係を神経生理学および心理学的に解明し、そこで得られた知見を基に日常生活環境において人間と共生できる機械(情報システム)を実現することは「人にやさしい」、「バリアフリーな」21世紀社会の構築に大きく寄与するものと考えられる。

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