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ここでは、最も基本的な問題として、単一の観測ステーションによって1つの
移動対象の実時間追跡を行うアルゴリズムおよびカメラ制御方式を考える。
先に述べたように、各観測ステーションにはAPSカメラが備えられ、それを用
いて移動対象の検出と追跡を行う。そのためのアルゴリズムとして、現在次の
ようなものを研究している。
- 頑健な背景差分実現のための動的背景モデル:
-
任意のパン・チルト(・ズーム)で撮影した観測画像と、APSから生成した背
景画像との差を取るという背景差分によって、既知の背景とは見え方が異なる
「変化領域」として移動対象を検出することができる。また、カメラの視線制御と
背景差分を繰り返すことにより、対象の追跡も実現できる。しかし、実世界に
おけるシーンでは、様々な要因によって背景の映像はたえず変動しており、1
枚の静止画像によって背景モデルを表現した場合、変動する背景(風にそよぐ
木々、CRTのフリッカなど)も移動対象として検出されてしまう。我々は、こ
うした問題を解決し、頑健な背景差分を実現するための方法として、背景の変
動をモデル中に取り込んだ動的背景モデルの研究を行っている。この考え方の
有効性は、すでに[9]において示したが、現在はより頑健な動的背景
モデルの構築を進めている。
- 選択的注視に基づく動作認識:
- これは、固定カメラを用いて撮影した
動画像に背景差分を適用し、得られた変化領域の時系列を基に、対象の動作モ
デルの学習とモデルに基づいた動作認識を行おうとするもので、その詳細は
[10]を参照して頂きたい。
- カメラ運動を利用した移動対象の検出と運動情報の獲得:
-
APSカメラの場合、カメラ運動によって生じる画像中のオプティカルフローは、
シーンの3D構造に拘らず画面内の各点において常に一定となる。このため、他
の場所とは異なったオプティカルフローを示す場所を求めることによって容易
に移動対象が検出できる。また、画面全体のオプティカルフローからカメラの
正確な運動速度が計算でき、それから対象の運動情報も求めることができる。
現在、このアイデアに基づいた移動対象の検出と運動情報の獲得アルゴリズム
の開発を進めており、結果が得られ次第報告する。