人間の情報処理の理解とその応用に関する研究

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2002年度の活動記録

2004 | 2003 | 2002 | 2001 

* 特定領域「情報学」A03 第2回柱内研究会

概要
開催日: 2002年5月16(木)
場所: 京都大学吉田キャンパス内 総合校舎 2F 213号室
出席者: A03柱関係者14名、外部35名、計49名
内容: 下記のプログラムにしたがって、人間と機械とのマルチモーダル知覚を介したインタラクションについて議論した。
その他: 松山研究室見学
プログラム
タイトル: 人間の日常生活動作の認識を考える
発表者: 森 武俊(東京大学大学院 情報学環)
概要: 人間と機械とが密に協調する、将来の人間支援システムでは機械による人間の動作の認識手法が基礎的な技術の一つとして重要になると考えられる。その中核には、人間動作解析技術と、人間によって行なわれる動作認識のモデル化が位置する。今取り組んでいる、人間の日常行動を解析するための道具立ての開発と、人間による動作認識と同様の結果を出力する動作認識モデルの構築について、議論を行ないたい。
タイトル: 人間と機械のコミュニケーション:人間と環境の観察とインタラクション
発表者: 久野義徳(埼玉大学)
概要: 人間に負担の少ない使いやすいヒューマンインタフェースの実現のための技術について議論したい。ヒューマンインタフェースは人間と機械のコミュニケーションと考えられるが、ここでは、人間の意思を機械に伝達する部分を特に考える。意思を伝達するには、何らかの行動は意識的に行う必要がある。この行動をできるだけ自然で、最小限のものにしたい。そのためには意識的行動から得られる情報以外の情報を利用することが必要になる。その一つは、意識的に行う以外に、人間が無意識・非意図的に行う非言語的行動を観察することである。もう一つは周囲環境の情報である。人間は対面コミュニケーションにおいては、互いに見て分かっていると思われることは意識的には伝達しない。また、周囲状況に応じて何がしたいか、何をすべきかが限定される場合も多い。以上のような情報の獲得と利用の方法を検討する。さらに、これらの情報の獲得には誤りが不可避であるが、これを人間と機械のインタラクションの中で解決していく方法を考えていきたい。
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* 特定領域「情報学」平成14年度第1回領域全体会議「2001年度研究成果報告会」

概要
開催日: 2002年6月19日(水)・20日(木)
場所: 日本教育会館 (東京都千代田区一ツ橋2-6-2)
内容: ・A03柱の各研究課題に関して、平成13年度の成果報告を行った。
・A03柱の柱としての研究の方向性について、柱長がたたき台を示し、それをもとに方向性についての議論を深めるとともに、各研究課題がその中でどのように位置づけられるかを検討した。
なお、プログラムは下記URLを参照のこと。
http://research.nii.ac.jp/kaken-johogaku/staff-only/H13seika-2002-06-19.html

* 特定領域「情報学」A03 第3回柱内研究会

概要
開催日: 2002年9月9(月)
場所: 国立情報学研究所(東京都千代田区一ツ橋2-1-2) 12F 1201号室
出席者: A03柱関係者22名、外部23名、計45名
内容: 下記のプログラムにしたがって、平成14年度新規参加課題の研究概要を研究代表者が報告した。
プログラム
タイトル: 音声対話における感性情報伝達にかかわるヒューマンインタフェース
発表者: 中村 敏枝(大阪大学 人間科学研究科)
概要: 音声認識技術や音声合成技術の進展に伴い、種々の電子メディアを介した音声対話システムが用いられ始めている。音声による情報伝達は文字によるよりも手軽であり、年齢を問わず、また、障害や加齢に伴う視覚的弱者にとっても使いやすいという理由から、音声対話にかかわるヒューマンインタフェースの重要性は今後ますます増大すると思われる。人間の情報伝達の特性を十分に配慮し活用した対話システムを構築しなければならない。音声による伝達は感性情報が大きな役割を果たす。その中でも日本語の話し言葉においては「間」が極めて重要であることが指摘されている。対話における「間」の特性を解明しモデル化することによって、日本文化の根源ともいわれる「間」の感性をインタフェース設計の中で利用可能にしようとするのが本研究の目的である。研究代表者は「間」に関する心理学的研究を10年以上にわたって続けている。その成果として、「間」の感性を科学的に追究できることを実証すると共に音声コミュニケーションにおける「間」の効果を定量的に示すことに成功した。これまでに蓄積した研究成果と開発した研究方法を用いて「間」の定量的モデルを構築し、現実生活における音声情報伝達に応用するための研究に入るべき段階にきている。

今年度の研究計画は下記の通りである。
  1. 現実の行動場面での対話において取られる「間」の長さの測定:日常行動における対話の円滑な進行と「間」の関係を探るために行う。
  2. 対話の聴取実験:上記対話から聴取者が受ける印象を測定する。感情評価のほか対人認知や社会的スキルの測定法も用いる。
  3. 対話における「間」の長さと心理量の関係:上記結果に基づき、伝えたい内容、感情表現、話のわかりやすさ、対人認知、社会的スキルと「間」の長さとの関係を追究して法則性を見出す。
  4. 「間」の長さと心理量のあいだの法則性を実験室的研究により検証:上記結果から得られる仮説を検証するために、条件を厳密に統制できる実験室内で心理実験を行う。実験結果により、自動応答システムなどの対話メディアに応用しうる「間」の定量的モデル構築のための基礎データを蓄積する。本研究室の有する音声実験装置、ならびに、社会的要因を変数とする実験を可能にする防音室を活用する。
タイトル: 「間(ま)」を合わせる共創型インタフェースに関する研究
発表者: 三宅 美博(東京工業大学 総合理工学研究科)
概要: 人間同士の協調作業では、相手と「間(ま)」を合わすことが重要である。しかし、この「間」と深く関係する主観的「いま」は、未来を含む予測的領域に創出されることが既に示唆されている。このことは、人間の時間知覚は点としての現在ではなく、広がりを持つ空間化された時間領域の創出と密接に連関していることを意味する。本研究では、これらの背景から、「間」が共創される過程を、時間知覚と身体性(空間性)の二重化された相互拘束関係の中で捉えることを試みる。特に、今年度は同期タッピング課題を用いることで共創過程を実験的に解析する予定である。さらに、その結果に基づいて「間」を合わせる共創型インタフェースの設計論へと展開させたい。
タイトル: 皮膚感覚インターフェースデバイスの開発と皮膚感覚情報処理の解明
発表者: 篠田 裕之(東京大学 情報理工学研究科)
概要: 皮膚感覚のメカニズムや人間の心理・知的活動との関係を解明し、皮膚によるインターフェースの可能性を検討する。特にその出発点として、皮膚感覚の「センシング—伝送・記録—ディスプレイ」を可能とするシステムを開発し、皮膚感覚研究の標準デバイスを確立する。なお本研究において開発される新しい要素技術は、情報システムの幅広い分野に応用可能である。
タイトル: ウェアラブルコンピュータを用いた主観的体験記録の研究
発表者: 廣瀬 通孝(東京大学 先端科学技術研究センター)
概要: 本研究はウェアラブルコンピュータを用い、個人の主観的体験を記録することで、人間の体験構造を知覚的認知的側面から解明することを目的としている。これまで、意識的に記録された体験情報と、無意識的に形成された体験記憶との間には情報量の相違が著しく、記憶に留めた体験すべてを記録することは不可能に近かった。恒常的に情報機器を身につけることが可能なウェアラブルコンピュータを用い日常的に体験を記録することで、客観的記録と主観的記憶との距離を縮めることができるであろう。またこうした手段を用いることで大量の体験データを蓄積することが可能になり、体験とは何か、記憶とは何かについて解明するための手がかりを得ることができると考えられる。
タイトル: 動的状況における視覚情報の統合メカニズム
発表者: 齋木 潤(京都大学 情報学研究科)
概要: 最近、我々の視覚認知システムは外界の複雑で安定した内部モデルを構築して外界を認識するのではなく、その時々には外界の一部のモデルしか持たないにも関わらず、注意機構が外部から取り入れるべき情報をうまく制御することによって、あたかも複雑なモデルが内部に存在するかのように機能していることを示唆する様々な知見が報告されている。言い換えれば、視覚認知は外界の精緻なモデルの構築ではなく、外部情報と記憶情報の精緻な相互作用によって成立していると言える。このような相互作用的な見方にたつと視覚認知における情報統合のメカニズムは従来考えられていたものとはかなり異なるものと考えざるを得ない。当日は、視覚認知における情報統合メカニズムを解明するために我々が動的状況を用いて行ってきた心理実験の成果を紹介し、今までに明らかになってきたことや今後の課題、また人間の視覚認知過程の解明のPUIの開発にとっての意義等について議論したい。
タイトル: 行動の認識と生成の双方向計算モデルを実現する力学的情報処理
発表者: 岡田 昌史(東京大学 情報理工学系研究科)
概要: 人間や霊長類の脳に存在するミラーニューロンは、他人のある行動に対する知覚と自分の同じ行動の発現に対して発火する脳の部位である。これは言語操作を司る領域に存在するので、行動の知覚と生成(見まね)がシンボルマニピュレーションをうながし、人間の高次知能の実現に通じていると考えられている。我々はこのミラーニューロンにおける行動認識/生成の双方向計算モデルを工学的に実現することでヒューマノイドの知能構成の展開を試みる。本発表では、脳の働きの重要なアスペクトの一つである力学的な情報処理機構に注目し、ミラーニューロンのプロトタイプモデルについて説明する。
タイトル: マイク・スピーカーアレイと実時間追跡視覚とによる対象人物追従型遠隔伝声技術
発表者: 溝口 博(東京理科大学 理工学部)
概要: (背景)「人に優しいIT」、「人と共生する情報システム」の実現には、システムが人をみて判る機能が不可欠である。この文脈で人を見守り、人と直接、音声や身振りを介してやりとりできる識別型ユーザインタフェースへの期待と要求が高まっている。しかしながら、音声理解や対話以前の問題として、広範囲に動き回る人間に対し、離れたところから雑音無く音声を授受する手段さえも確立されていないのが現状である。まず、人の存在を認識してその人に注意を向け、言わば「聞き耳をたてる」ような形で音声を集音し、「耳元で語りかける」ような形で音を聴かせる技術の確立が急務である。

(目的)上記背景を踏まえ、本研究では、対象とする人の頭部周辺に「スポット状」の高感度・高音圧分布を作り出してS/N比の高い集音・伝送を実現し、たとえその人が動いても、それに対してスポット状高感度・高音圧分布を追従させることが可能な対象人物追従型遠隔伝声システムの実現を目指す。このため具体的には、多軸マイクアレイ・スピーカーアレイによる「スポットフォーミング」技術と、実時間ステレオ追跡視覚による移動対象人物へのスポット実時間追従技術とを提案し、提案に基づく実験システム構築を通じてシステム構成法を明らかにする。また、実証実験を通じ実現可能性と有効性を明らかにする。

(特色)本研究計画の学術的特色と独創的点および意義は以下のとおりである。聴覚と視覚との融合:シミュレーションではなく、実世界中で、実時間で統合する点。広範囲の応用:人間協調機械に留まらず、セキュリティシステムやプラント保守点検等多岐にわたり、実用的および社会的意義が高い。

(位置づけ)機械による人とのやり取りの研究には、東大のロボティックルーム、ETLのSELF、ジョージア工科大のAware Home等があるが、本研究のような基本技術の面での視覚と聴覚の融合は無い。マイクアレイやスピーカーアレイに関しては、奈良先端大やATR、三菱総研、ETL、Harvard大、Brown大、Rutgers大などで研究開発が行われている。しかし、いずれもビームフォーミングのみであり、本研究で目指す「スポットフォーミング」は類を見ない。また、本研究が目指す実時間ステレオ追跡視との組合せによる移動対象の追跡収音機能も世界的に例が無い。

* 特定領域「情報学」A03 公開講演会

概要
開催日: 2003年1月22日(水)
場所: 一橋講堂
内容: 下記のプログラムにしたがって、領域全体の研究活動を対外的にアピールした。
その他: 領域関係者懇親会(中会議場)
プログラム
領域代表挨拶 : 安西祐一郎(慶應義塾大学)
招待講演1: Francine Berman(Director, San Diego Supercomputer Center)
招待講演2: 三浦謙一(富士通研究所フェロー)
研究活動紹介1: A01 新しいソフトウェアの実現
A02 コンテンツの生産・活用に関する研究
A03 人間の情報処理の理解とその応用に関する研究
研究活動紹介2: A04 情報セキュリティに関する総合的な研究
A05 最先端の情報通信システムを活用した新しい研究手法
A06 情報化と社会制度の構築に関する研究

* 特定領域「情報学」A03 平成14年度 成果報告会

概要
開催日: 2003年1月23日(木)
場所: 学術総合センター・ 中会議場 3・4
内容: 下記のプログラムにしたがって、平成14年度の研究成果について、その報告と議論を行った。
その他: 総括班会議
プログラム
タイトル: 環境に特定的な行為を記述する試み
発表者: 佐々木正人(東京大学大学院情報学環)
タイトル: 動的状況での視覚認知における情報統合メカニズムの研究
発表者: 齋木潤(京都大学大学院情報学研究科)
タイトル: 主観的視覚体験記録のための, ウェアラブルコンピュータの方式についての研究
発表者: 廣瀬通孝(東京大学先端科学技術研究センター )
タイトル: 能動視覚による動的な空間知覚と立体形状認識機構の解明とその応用システムの構築
発表者: 出口光一郎(東北大学大学院情報科学研究科)
タイトル: 分散感覚知能デバイスのネットワーク化による人間支援
発表者: 橋本秀紀(東京大学生産技術研究所 )
タイトル: 人物行動を伝えるための映像文法を用いた知的映像撮影・編集システムの構築
発表者: 中村裕一(筑波大学機能工学系)
タイトル: 音声対話における感性情報伝達にかかわるヒューマンインタフェース
発表者: 中村敏枝(大阪大学大学院人間科学研究科)
タイトル: 「間(ま)」を合わせる共創型インタフェースに関する研究
発表者: 三宅美博(東京工業大学大学院総合理工学研究科)
タイトル: 力覚メディアの対遅延特性とメディア同期の研究
発表者: 瀬崎薫(東京大学空間情報科学研究科センター)
タイトル: マイクロ機能要素集積デバイスによるフィジカルマンマシンインタラクション
発表者: 鈴森康一(岡山大学工学部)
タイトル: 皮膚感覚インターフェースデバイスの開発と皮膚感覚情報処理の解明
発表者: 篠田裕之(東京大学大学院情報理工学系研究科 )
タイトル: フォーム型Web情報サービス享受のためのマルチモーダル対話インタフェースの研究
発表者: 北岡教英(豊橋技術科学大学工学部)
タイトル: 直交2軸スピーカーアレイによるスポット状局所的高音圧領域の形成
発表者: 溝口博(東京理科大学理工学部機械工学科)
タイトル: ミラーニューロンの計算モデルに基づく行動と言語の相互発達の情報処理
発表者: 岡田昌史(東京大学大学院情報理工学系研究科)
タイトル: ロボットの音声対話理解のための視覚情報処理
発表者: 久野義徳(埼玉大学工学部)
タイトル: リモートブレインロボット方式に基づく生活支援パーソナルIT環境の研究
発表者: 稲葉雅幸(東京大学大学院情報学環)
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