人間の情報処理の理解とその応用に関する研究

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2003年度の活動記録

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* 特定領域「情報学」A03 2003年度 第1回計画班会議

概要
開催日: 2003年5月7日(水)
場所: 国立情報学研究所 15F セミナー室
出席者: 計画班関係者7名
内容: 中間評価に向けた現状、および、2003年度の活動計画について議論した。

* 特定領域「情報学」A03 第4回柱内研究会

概要
開催日: 2003年7月2日(水) 13:00 - 16:30
場所: 芝蘭会館  2F 研修室1 (京都市 左京区吉田牛の宮11-1)
出席者: A03柱関係者27名、外部21名、計48名
内容: 下記のプログラムにしたがって、平成15年度に新規採択された公募研究の研究目的・内容について説明を行い、特定研究で目指す研究の方向について議論した。
プログラム
タイトル: 非言語コミュニケーションが可能なロボットハンドの設計
発表者: 星野聖(筑波大学機能工学系)
概要: 本研究の目的は,「動作や身ぶりからヒトの気持ちが理解できるロボット」および「自分の動作に情感や感情を籠められるロボット」の設計にある.具体的には,第一に,ほぼ実時間で「見まね」によりヒト手指動作を再現できるロボットハンドの設計.第二に,ヒト上肢動作の単眼あるいは両眼CCD動画像から,ほぼ実時間で動作を再現できるヒト型ロボットアームの実現を目指す.次年度以降は,複数の運動データを任意の比率で内挿・外挿可能なCGアニメーションを用いた心理実験により「運動が伝達する情感や感性の定量化」とデータベース構築を行い,伝達したい心情に応じてハンドやアームの動作を修飾できるシステムの実装と,同データベースに基づき相手動作の動画像から気持ちを推定するシステムの構築を図る.
本研究の推進により学術的に期待される成果としては,第一に,ヒト非言語コミュニケーションの中で,従来,比較的精力的に研究されてきた顔や表情以外の対象の効果を明らかにすることができること.第二に,ヒトの比較的複雑な随意運動や順序運動の多くが,他者動作の「見まね」により実現されるが,脳と視覚系がいかにして複雑で小さい手指3次元形状を認識し,自己の手指や上肢を通して同じ動作を再構築するかを,ロボットハンドによる実証実験により検討することが可能となること.第三に,本研究推進の技術的成果として,とくにヒトの手指を「モノの把持や操作の道具」ではなく,ジェスチャや手話に代表されるような「情報伝達の手段」として捉えることにより,従来のヒューマノイド・ロボット研究でおろそかにされてきたハンド部分に新たな高機能を付与し,ヒト−ロボット間の非言語コミュニケーションへの道を拓くことが期待できることである.
タイトル: 遠隔操作プラットフォームを用いた人間の把持操り動作時の視触覚情報処理過程の解明
発表者: 横小路泰義(京都大学大学院工学研究科)
概要: これまでロボットハンドの多くは,単に人間の手指の外見のみを模倣して作られただけであったため,いまだに人間の器用さに比肩するロボットハンドは見当たらない.本研究では,人間が把持・操り動作を徹底的に計測し,視触覚情報の処理課程を解明することを目的とする.この成果から人間の情報処理過程の解明とともに,単なる外見の模倣から脱したロボットハンドの実現の糸口を探る。本講演では,これまでの関連研究として,ハンドとアームを統合した遠隔操作プラットフォームの構築と器用さを定量的に評価できるベンチマークテストに関する成果と,遭遇型という新しいタイプのハプティックデバイスで仮想物体の把持力を提示できる最適なデバイスの機構を設計するために,人間の物体把持様式を計測した研究について紹介する。
タイトル: 超多自由度腱駆動ヒューマノイドの自己感覚モデルの形成と環境適応行動の実現へ向けて
発表者: 水内郁夫(東京大学大学院情報理工学系研究科)
概要: ヒューマノイドを人間の生活の場で活動できるようにすべく、柔軟性と超多自由度を有するヒューマノイドを開発している。複雑な身体構造と環境の状態を、多種多様なセンサ情報から推定する自己感覚モデルを自動形成 することにより、経時変化や不確実性のある機械でも、目的の動作・行動を達成できる情報システムの構築を本研究の目的とする。 今年度は入出力情報の間のモデル(自己感覚モデル)の形成法に関する研究を行いたい。「情報学」A03柱のこれまでの研究成果からも大いに示唆を得られ、また本研究の成果により同領域の研究の進展に寄与できると考えている。 本研究は、柔軟性・超多自由度という特徴を前面に出してヒューマノイドを実際に設計・製作してきた点に独創性があり、十分な複雑性を有するボディ(8種類 400以上のセンサ・96のアクチュエータによる全身腱駆動ロボット)により、実データに基づいて行うという点に特色がある。従来研究の手法の実機によるトライが可能で、その上に実機ならではの新たな知見を加えてゆきたい。
タイトル: Formation and Brain Representation of Finite-state Syntax
発表者: 岡ノ谷一夫(千葉大学文学部)
概要: We should that when humans listen to a stream of auditory token whose order is determined by a statistical rule, perceptual segmentation of these tokens correlated with a strong negative evoked brain potential at around 400 ms of the boundary of the segments recorded from the area close to the anterior singulate cortex. Such statistical stream also activates cortical areas including Broca's as shown by a near-infrared optical spectroscopy. To understand the relationship between statistical and syntactical segmentation, we will compare differences between brain activation due to statistical or syntactical stimuli.
タイトル: 人間の行動観察のためのセンシングシステムの構築
発表者: 八木康史(大阪大学産業科学研究所)
概要: 本課題では,周囲360度が実時間観測できる全方位視覚センサを入力手段として,日常生活のおける人間の行動を非接触で観察できる実時間人間情報計測システムを構築する.ここでいう人間情報計測とは,人物の移動軌跡,ジェスチャや身体動作の計測から頭部や視線方向の推定,さらに性別や個人の識別,表情の認識を指す.本発表では,我々がこれまでに構築してきた人物情報計測システムならびに個人認証システムについて紹介すると共に,今後の展開について述べる.
タイトル: 行動や体験の記録にもとづく時空間表現メディアの研究
発表者: 間瀬健二(名古屋大学情報連携基盤センター)
概要: 共生型情報システムのひとつのアプリケーションであるコンピュータ仲介型コミュニケーション(Computer Mediated Communication, CMC)の新しい形態の研究を行う。具体的にはぬいぐるみ型ロボットなど人工パートナーの試作と実験を通じて、語り、対話、遊び、日常的な体験など一過性が高く時間軸を有する事象やそこで生み出されるアイデアを記録、整理、共有するための計算メディアの実現をはかる。 アプローチとしては、メディア処理を含むさまざまなセンシング技術により、ユーザの置かれた状況を意味的に推定し、分節化の手がかりを得る手法を開発する。その際人工パートナーが状況を作り出すことにより、人間がシステムの複数メディアセンサとの相互作用をおこし、その強い同時性がメディア間につながりを与えることを利用する。
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* 特定領域「情報学」A03 第5回柱内研究会

概要
開催日: 2003年7月22日(火) 13:00 〜
場所: 東京大学 本郷キャンパス 工学部2号館 1F セミナー室 2 (東京都 文京区本郷7-3-1)
内容: 「ロボットの運動・マルチメディアデータなどの動的なイベントやその関係を構造的に記述・学習するにはどのような枠組みが必要か?」を中心に総合的な討論を行った。
プログラム
タイトル: マルチメディア認識のための動的システムの統合法
発表者: 川嶋 宏彰(京都大学 情報学研究科)
タイトル: 非単調神経回路網による時系列パターンの生成と制御
発表者: 森田 昌彦(東京大学 情報理工学研究科)
タイトル: 力学的情報処理系の設計とロボットの運動制御
発表者: 岡田 昌史(東京大学 情報理工学研究科)
タイトル: 身体性と社会性の認知脳科学的理解とアンドロイド構成論
発表者: 國吉 康夫(東京大学 情報理工学研究科)
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* 特定領域「情報学」A03 第6回柱内研究会

概要
開催日: 2003年9月30日(火) 10:00 〜
場所: 東京大学生産技術研究所 駒場II キャンパス 第1会議室
出席者: A03柱関係者23名、外部20名、計43名
内容: ・第2回共生型システム国際シンポジウムについて
・平成16—17年度公募研究について
・最終成果のまとめ方について
・次期特定領域研究について
プログラム
タイトル: 共創的時間としての「間(ま)」
発表者: 三宅美博(東京工業大学)
概要: 物理的世界と認知的世界のインタフェースにいま軋みが生じている。人間をその一部分として含むシステムは、人間を内側からも捉えられる共創システムでなければならない。このような問題意識から、なぜ「間(ま)」に関する研究がいま必要なのか?そして、この新しい研究領域にどのようにアタックすればよいのか?についてコメントしたい。さらに、昨年度より分担課題として進めてきた、人間における認知的時間の創出過程の解析とそのモデル化への可能性についても議論できればと考えている。
タイトル: 間(ま)の心理学としての生態心理学
発表者: 古山宣洋(国立情報学研究所)
概要: 従来、知覚と行為の問題は独立に設定され、対象そのものが十全に知覚できれば、得られた知覚情報をもとにその対象に対する行為のプランを作成し、それを実行することによって行為が産出できると考えられてきた。生態心理学では、ある対象に対して何ができるか、つまり対象がどのような行為をアフォードするかに関する情報は、その対象そのものにはなく、対象を含む環境や、観察者に備わる身体特性との相互関係にあると主張される。このように考えると、生態心理学において分析の単位とされる協調は「間(ま)」に他ならず、生態心理学は「間(ま)」に関する心理学だと言える。もし、ある対象に対して何ができるかに関する情報が、その対象と観察者、及びそれらを取り囲む環境とのあいだにある間(ま)に含まれるのであるとすれば、観察者/行為者がどのような行為の意図を持ち得るかもまた間(ま)によって制約されているはずである。したがって、間(ま)を情報の単位として行為について考えると、「意図」そのもの、及びコミュニケーションにおける「意図理解」に関する捉え方も変更を迫られることになると考えられる。本発表では、成果報告会などでは踏み込むことのできないこのような問題に立ち入り、参加者相互で意見交換をして議論を深めることができたらと考えている。
タイトル: 音声対話インタフェースにおけるユーザモデルの導入
発表者: 河原達也 (京都大学)
概要: 人間と共生する機械を実現するためには、システムがユーザのモデルを知覚し、それに応じて適応的に行動することが重要であると考えられる。本研究では、音声対話によるインタフェースにおいて、協調的な応答を生成するためのユーザモデルについて述べる。具体的には、システムに対する習熟度、タスクドメインに関する知識レベル、性急度の3つのユーザモデルを導入し、それに応じた対話制御を検討した。また、音声や言語・対話レベルなどの種々の特徴から、これらのモデルの判別方法の決定木学習を行った。学習の結果、ユーザの判別において、沈黙やバージイン(割込み発話)などの「間」の情報が重要な要素であることも確認した。このモデルを開発中の京都市バス運行情報案内システム(075-326-3116) において、実装・予備的評価を行った。
タイトル: 円滑なコミュニケーションを形成する「間」の役割
発表者: 中村敏枝・長岡千賀(大阪大学)
概要: 対人コミュニケーションを円滑にし、良好な人間関係を構築するために、「間」は重要な役割を果たす。「間」の役割を心理学的に解明し、「間」の感性を備えたインターフェースを設計するためのモデル構築を目指す。
タイトル: 対話システムにおけるあいづち・話者交替タイミング生成
発表者: 北岡教英(豊橋技術科学大学)
概要: 人間同士の会話においては,話者は互いにあいづちやうなずきでその発話を理解していることを明示し,相手の発話の終了から適切な間で発話を開始したり,時にはオーバーラップしたり割り込んだりするなどして会話はスムーズに進行する.このような振舞いを機械で実現できれば,よりスムーズな対話が行えると考えられる.

本研究では,このような振舞いを機械で実現することを目的として,ユーザの発話に対してリアルタイムにあいづち,割り込みなどの応答を返すシステムを構築することを試みている.まず,人間同士の対話においてあいづちや話者交替がどのような場合に起きるのかを,特に韻律情報および表層的言語情報に着目して分析した.また,それを基に学習した決定木を用いてあいづち,話者交替タイミングの検出を行うシステムを構築し,そのタイミングを人間との一致度や,自然性の主観評価を通して評価したので紹介する.
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* 公開シンポジウム『情報ルネッサンス:ぬくもりのある情報社会の構築に向けて』

概要
開催日: 2004年1月26日(月)
場所: 学術総合センター(東京都千代田区一ツ橋 2-1-2) 一橋記念講堂
内容: デモ&ポスター等を通じて、領域全体の研究活動を対外的にアピールした。なおプログラムは下記URLを参照のこと。
http://research.nii.ac.jp/kaken-johogaku/houkokukai-h15/symposium.html
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* 特定領域「情報学」A03 平成15年度 成果報告会

概要
開催日: 2004年1月27日(火) ・28日(水)
場所: 学術総合センター(東京都千代田区一ツ橋 2-1-2)12階 会議室1212
内容: 2日目午前中にパネル討論を企画し、柱の目標である「人間と共生する情報システム」に関する議論を深めた。
プログラム

1月27日(火)
〜〜『動的イベント認識機構』〜〜

タイトル: 人間の意図・行動の理解に基づく柔軟なヒューマン・マシン・インタラクションの実現
発表者: 松山隆司
タイトル: 力学的情報処理の階層化に基づく知能ロボットのリアルタイムカーネルの構築
発表者: 岡田昌史
タイトル: 身体性と社会性の認知脳科学的理解とアンドロイド構成論
発表者: 國吉康夫

〜〜『人と暮らす』〜〜

タイトル: 超多自由度腱駆動ヒューマノイドの自己感覚モデルの形成と環境適応行動の実現
発表者: 水内郁夫
タイトル: 視覚情報に基づく簡略化された発話の理解
発表者: 久野義徳
タイトル: 行動や体験の記録にもとづく時空間表現メディアの研究
発表者: 間瀬健二

〜〜『人と交わる』〜〜

タイトル: 聴覚・視覚の複数レベル実時間情報統合の研究
発表者: 奥乃 博
タイトル: ヒューマンフレンドリなマルチモーダル対話インタフェースを用いたWeb情報検索
発表者: 北岡教英
タイトル: 複数話者の音声コミュニケーションの意図・状況理解
発表者: 河原達也
タイトル: 非言語コミュニケーション可能なロボットハンドの設計
発表者: 星野聖
タイトル: マイクロ機能要素集積デバイスによるフィジカルマンマシンインタラクション
発表者: 鈴森康一
タイトル: 皮膚感覚インターフェースデバイスの開発と皮膚感覚情報処理の解明
発表者: 篠田裕之
タイトル: 「間(ま)」を合わせる共創型インタフェースに関する研究
発表者: 三宅美博
タイトル: 音声対話における感性情報伝達にかかわるヒューマンインタフェース—円滑なコミュニケーションを形成する「間」の役割—
発表者: 中村敏枝

〜〜『人を魅する』〜〜

タイトル: 非拘束・環境重畳型ヒューマンインタフェースの開発と応用
発表者: 日浦慎作
タイトル: 全方位画像センサとネットワークを用いた遠隔監視システム
発表者: 山澤一誠
タイトル: 人物行動を伝えるための映像文法を用いた知的映像撮影・編集システムの構築
発表者: 中村裕一
タイトル: 128チャンネル大規模スピーカーアレイによる別内容音声の複数箇所同時送出機能の実現
発表者: 溝口博

〜〜『人を観る』〜〜

タイトル: 人間による音声情報処理過程の分析とそれを応用した音声対話インターフェイスの構築
発表者: 峯松信明
タイトル: 直接操作を基にした個人適応能力を有する誘発型ユーザインタフェースに関する研究
発表者: 谷口倫一郎
タイトル: 能動視覚による動的な空間知覚と立体形状認識機構の解明とその応用システムの構築
発表者: 出口光一郎

1月28日(水) パネル討論

タイトル: 「人間と共生する情報システムとその実現に向けたA03柱の取り組み」
パネラー: 入來篤史、佐々木正人、國吉康夫
司会: 久野義徳
タイトル: 人間の行動観察のためのセンシングシステムの構築
発表者: 八木康史
タイトル: 運動計測情報に基づく人間の日常生活動作認識モデルに関する研究
発表者: 森武俊
タイトル: 人間行動の観察とロボットのタスク・スキル獲得に基づく作業熟練過程の解明
発表者: 池内克史
タイトル: 遠隔操作プラットフォームを用いた人間の把持操り動作時の視触覚情報処理過程の解明
発表者: 横小路泰義
タイトル: 装着型機器のシステム提案および体験記録についての研究
発表者: 廣瀬通孝

〜〜『ヒトを知る』〜〜

タイトル: 法則・原理の知覚を担う脳神経情報機構
発表者: 入來篤史
タイトル: 身体性に関わる人間-環境系情報の記述と解析—対象に変形を加えるダイナミックタッチ—
発表者: 佐々木正人
タイトル: 時系列刺激の学習に関わる事象関連電位
発表者: 岡ノ谷一夫
タイトル: 発話・身振り・呼吸の協調を生態力学的に制約する情報に関する研究
発表者: 古山宣洋
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