平成13年度の研究成果のまとめと今後の展望
(1)柱の成果のまとめ
A03柱では,日常生活環境において「人間と共生できる機械(情報システム)」を実現するための基礎研究として,以下の課題に焦点を当てて研究を行っている.
- 知覚と行動の動的相互作用に焦点を当てた,神経生理学および心理学的観点からのヒトの情報処理機能の解明
- 言語・音声・画像・力学メディアなどのマルチメディア情報の認識・生成方式の考案およびそのためのセンサ・処理装置・システムの開発
- 身体およびマルチメディア情報を介したマルチモーダルなヒューマン ⇔ マシン・リアルタイム・インタラクションの実現法およびそれを利用した共生型情報システムの開発
- 身体性の持つ情報学的意味の解明(「共生型情報システムには身体が必要か?」)および知覚・行動系を動的に統合化した共生型ロボットシステムの実現
これまでに得られた主な成果としては,以下のものがある.
- ニホンザルが道具を使用して行う作業の行動学的解析,脳画像解析,脳神経生理学的解析を行い,知覚・行動および予測・計画・推論などの高次知的機能に係わる脳内メカニズムの一端を明らかにした.(課題 I)
- 身体を介した人と環境との動的相互関係の解明を目指して,(1)運動障害リハビリテーション(2)乳児の初期運動発達(3)アーティストの表現活動における運動協調 の分析を行い,身体動作の発現・発達メカニズムの一端を明らかにした.(課題 I)
- 視線測定装置と2台の首振りカメラを備えた装着型(へルメット型)ビジョンセンサを開発し,装着者の3次元的注視対象抽出および3次元的移動軌跡の計測を行うアルゴリズムを開発した.(課題 II)
- 人間の詳細な3次元的姿勢や動作を2cmの空間解像度で実時間計測できるマルチカメラシステムを開発し,人間の指差し動作のメカニズムの一端を解明した.(課題 II)
- 人間の両手をマウスの代りとして使い,手で自由にコンピュータを操作できる拡張机型インターフェイスシステムを開発し,その実用的有用性を示した.(課題 III)
- 人間が人型ロボットの動作を見たときの脳内活動を光トポグラフィ装置によって計測し,人型ロボットがビデオ映像よりもリアリティを持った「相手」として認知されているという知見を得た.(課題 IV) 今後は現在行っている研究をより深め,学術的価値の高い成果を生み出すとともに,成果を利用した装置やシステムの開発,実用化へと展開を図って行く計画である.