平成13年度の研究成果のまとめと今後の展望
(3)研究経緯概説
本柱の目指す「人間と共生する機械(情報システム)」を実現するには,神経生理学,心理学的観点からの人間の情報処理機能の解明から,言語・音声・画像・力学メディアといった多様なメディア情報処理,「しっくりとした」コミュニケーションを実現するためのヒューマン ⇔ マシン・リアルタイム・インタラクション,さらには身体性に焦点を当てたロボット研究といった幅広い専門分野を基盤とした学際的研究が不可欠である.
このため本柱では,神経生理学,心理学およびマルチメディア情報処理の立場からそれぞれ1つずつ計画研究を組織するとともに,上記の多様な専門分野の研究者を公募研究として集めた研究体制を作っている.
一方,こうした学際的な研究を効果的に進めるには,
- 明確で焦点の絞られた研究目的,ゴールの共有
- 専門用語や研究スタイル・文化の違いを越えた具体的問題意識の共有が不可欠であり,これらを実現するために
- 柱長による研究目的,ゴールの明快な提示および,それに対するアンケート調査や討論を通じた参加研究者の問題意識の統一
- 計画研究代表者および評価委員による厳密な研究評価を通じた研究目的,ゴールに合った公募研究の絞り込み
- 議論のために十分な時間を取った研究討論会の定期的開催
を行って来た.
この結果,この1年の活動を通じて「人間と共生する機械(情報システム)の実現」という研究目的およびそのゴール実現のための具体的研究課題について参加研究者の意識がうまく統一され,柱としての研究体制が固まった.また,研究評価の結果,平成13年度の公募研究23件中4件を非継続とし,平成14年度から新たに8件の公募研究が採択された.さらに,これまでに行った合計5回の研究討論会を通じて,参加研究者同士の連携が様々なレベルで生まれ,研究課題として挙げた「身体性の持つ情報学的意味の解明(「共生型情報システムには身体が必要か?」)および知覚系・行動系を動的に統合化した共生型ロボットシステムの実現」については,複数の公募研究を組織化して1つの新たな計画研究を立ち上げようという計画が立てられるまでに至っている.また,議論の結果,研究の輪を国際的にも広げることが提案され,本年11月に国際シンポジウムを開催することになった.