平成13年度の研究成果のまとめと今後の展望
(5)今後の進め方
(3) 研究経緯概説で述べたように,この1年間の活動によって柱内における学際的研究の推進体制がほぼ整い,今後1,2年は上記 (4) 研究構成で述べた具体的な課題に焦点を当てて研究を掘り下げていく計画である. 研究期間の後半では,
- 前半の期間で得られた研究成果を踏まえた実用システム,ソフトウェアプロダクトの開発を進め,研究途中で得られた成果についても逐次産業界への技術移転や商品化を進めていく.
- 複数の研究班を統合した総合システムの実現,特にマルチメディア情報認識および提示といったマルチメディア情報処理技術とロボット技術との融合を積極的,計画的に進め,デモンストレーション可能な人間と共生できる機械(情報システム)の実現に重心を移して行く計画である.
ただ,これまでの研究活動の中で明らかになった組織体制上の問題として,上記の(IV)「人と暮す」:日常生活環境で活動するロボットの実現 の研究課題への取り組みがある.すなわち,この研究課題は,本柱が目指す人間と共生する機械(情報システム)の実現にとって中核的な問題であるにも係わらず,現在の体制では研究のほとんどが公募研究によって行われており,研究の継続性,発展性の観点から支障が生じる可能性がある.これを解決するために本柱では,平成15年度より「身体性と社会性の認知脳科学的理解とアンドロイド構成論」という研究テーマで新たな計画研究を立てることを提案している.この計画研究は,これまで公募研究として優れた研究成果を挙げている國吉康夫(東京大学・大学院情報理工学系研究科・助教授)および石黒 浩(和歌山大学・システム工学部・教授)の両氏を中心メンバとして進めようとするもので,2つの公募研究の統合による計画研究の新設であり,研究内容面ではこれまでのものの強化,拡充と位置づけられる.
人間と共生する機械(情報システム)というコンセプトは,ソフトウェア,ネットワーク,コンテンツ,さらには社会制度といった領域内の他の柱の研究とも深い関係があり,今後具体的な連携方法を探っていく計画である.特にA02柱のコンテンツ研究に関しては,マルチメディア情報の処理といった基盤技術を共有しており,緊密な研究交流を図りたいと考えている.
さらに,本柱では,柱内での学際的研究,領域内での他の柱との連携に留まらず,研究,議論の輪を国際的にも広げるため,定期的に国際シンポジウムを開催することを考えており,第1回として本年11月に京都で国際シンポジウムを開催する.このシンポジウムでは,海外からの招待講演,柱における研究成果発表に加え,実用化に近いレベルになった研究成果についてのデモンストレーションを行い,大学などの研究者だけでなく,企業の技術者にも参加を呼び掛け,産学連携による実用化研究の機会にもなるような企画を立てている.
最後に,本柱が目指している「日常生活環境において人間と共生できる機械(情報システム)」を実現することは,「人にやさしい」,「バリアフリーな」情報化社会の構築に大きく寄与するものと考えられ,IT社会の深化が人間中心の社会の構築を目指したものであることを広く社会にアピールすることができ,本柱の研究は社会的にも大きな意義があると考えられる.