人間の情報処理の理解とその応用に関する研究

平成14年度の研究成果のまとめと今後の展望

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(2)説明資料−c. 研究構成

I. 「ヒトを知る」
  1. サルは道具をどう見なして扱っているのか?:
    道具を使った作業の行動学的解析,脳画像解析,脳神経生理学的解析(計画研究:入来班)
    ニホンザルが目的を達成するために複数の道具を計画的に組み合わせて使うとき,行為の各要素間の因果関係や論理構造をどの様に知覚して全体としての行為を予測的に発現するかの脳内機構を検索した結果,頭頂葉ニューロン群によって分散的に表象された行為の高次構造が前頭葉皮質活動によって合目的的に制御されていることを示唆する知見が得られた.
  2. 物・環境はヒトの身体行為に何を与えているか?:
    物や環境をヒトの行為で記述する方法の開発(計画研究:佐々木班)
    重度の運動障害者の運動獲得過程に物がどのような制約を与えているのかを靴下ー頚椎損傷者,魚ー脳卒中者,卵の表面ー高次脳機能障害者という単位で記述した.また,乳児の行為が利用する環境を長期に渡り撮影し,行為の解析に利用可能な動画データベースの作成を開始した.さらに,プロのバイオリン奏者の身体運動に現われるさまざまな水準の協調に着目し,楽器演奏の「芸術性」,「個性」の記述・解析を目指した.
  3. ヒトは他者をどう捉えているのか?:
    身体性に基づく行為理解と人間のアンドロイド認知(計画研究:國吉班)

    ヒューマノイド全身行動の情報構造分析と身体性学習メカニズム構築,行為認識の学習モデルの構築,相互作用実験用アンドロイドの構築,アンドロイドの振舞いを観察中の幼児の脳活動計測を行い,身体性と他者認知に関する新たな研究アプローチを展開した.
  4. ヒトが理解しやすい規則とはどのようなものか?:
    有限状態文法の獲得過程と脳表象(公募研究:岡ノ谷班)

    これまでの研究で,人間の統計的予想に対応する特徴的な脳波波形を発見した.この波形を指標に,さらに,文法的なルールが脳でどう理解されるのかを解明する.
  5. コミュニケーションにおいてヒトはどのように息を合わせるのか?:
    発話・身振り・呼吸の協調メカニズムの解明(公募研究:古山班

    発話と身振りを使ったマルチモーダル・コミュニケーションの動的メカニズムを,発声の下位運動系である呼吸運動との関連で捉えることを試みた.その結果,1人の人間における場合および人との対話状況における場合のいずれにおいても,発話,身振り,呼吸における動的相互連関性,協調性を示唆する結果が得られつつある.今後は,より日常的な会話場面において,言い淀みなど流暢な相から非流暢な相への転移が起こる際,あるいは逆に非流暢な相から流暢な相へ移行する際に,発話が身体運動及び呼吸とどのように再組織化されていくかに関する解明も進めて行きたい.
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