平成13年度の研究成果のまとめと今後の展望
(4)研究構成
IV. 「人と暮す」
- 日常生活環境で活動するロボットの実現
- 「ヒトはロボットを何と思っているのか」(公募研究:石黒班)
人間が人型ロボットの動作を見たときの脳内活動を光トポグラフィ装置によって計測し,人型ロボットが,人間を写したビデオ映像よりもリアリティを持った「相手」として認知されているという知見を得た.この結果は,人と共生する機械が人と同じようにして動作を行うことによって,人のパートナーとして認知され親しみが持たれることを生理学的に示したことになる.
- 「体があることにどんな意味があるのか?」:身体の持つ情報学的意味の解明(公募研究:國吉班)
ヒトであれロボットであれ,それが持つ身体の物理的特性によって,それ固有の感覚運動情報の時空間構造が生み出されることが身体性の情報学的意味であるという仮説を検証するため,転がりながら起き上がる運動といった人の複雑な身体動作の動的構造の分析,ニューラルネットワークを用いた複雑な身体動作の学習シミュレータの作成などを行った.
- 「ロボットが家にやってきた」(公募研究:稲場班)
手足や顔による表情の表出機能を持った小型の人型ロボットを開発し,家庭やオフィスなどの日常生活環境において,人とロボットがどのような交わりをするのかを検証する.特に,ノートPCやPDAなどを使ったパーソナルIT環境においてロボットがどのような役割を果たすのかに焦点を当てて研究を行う.
- 「人から学ぶロボット」(公募研究:池内班)
マルチモーダルな知覚を用いて人が行う手作業の様子を観察し,その方法や手順を獲得・学習する人型ロボットを開発した.これによって,言語化が困難だとされてきた,熟練を要する技の電子的記録・保存が可能となり,技の伝承にも役立つものと思われる.
- 「人を支えるロボット」(公募研究:久野班)
足の不自由な人の日常生活を支えるためのロボットとして知的車椅子を開発した.このシステムは,周囲の歩行者の顔の向きにより,その人が車椅子に気づいているか否かを自律的に判断し,その結果によって適切な歩行者回避行動を起す機能や,介護者がいる場合には,介護者が意図的な操作をしなくても,介護者に合わせて自動的に移動する機能などを持っている.